ひとり言 其の二百七十九(第38回新人ギタリストオーディション)
2009年6月29日
第38回新人ギタリストオーディションが終わり、下記の結果となりました。
1位合格 福井浩気さん
2位合格 岩木俊宏さん
3位合格 菅沼聖隆さん
次席 佐藤雅也さん
今年は欠席者が一人もなく、タイムスケジュールもほぼ予定通りに進行し、予選、本選ともにすんなり結果も出て、委員としても審査員としても良かったと思っています。
私の個人的な採点も上記の結果とまったく同じでしたし「今年は採点しやすかった」と言うのが殆どの審査員の感想でした。
オーディションやコンクールに挑戦される方は、本番に向けて努力を続けてこられ、本当に立派だと思います。
ただ、せっかく努力をしても、それが間違った方向だとしたら「もったいない」ですよね。
例えば、子供の頃に勉強して漢字を覚えましたが、間違った漢字を何度も書いて一生懸命に覚えてテストを受けても、結局バツになってしまうわけですから、せっかく勉強したのに、もったいない話です。
学校ではバツをもらうことによって「ああ、間違って覚えてた」と自覚し、それをきっかけに正しい漢字を覚えることが出来ますが、音楽では「何が正しくて、何が間違っている」という線引きが曖昧なので、なかなか自分では気がつきにくく、同じ問題を何度も繰り返してしまう傾向があるようです。
オーディションやコンクールで「ミスをして落ちた」というのは、ある意味問題ないとも言えます。
自分でどこが悪かったのかがわかっているからです。
問題なのは、自分では納得できる演奏をしたにもかかわらず落ちた場合です。
ミスもなく上手く弾けたと思ったのに「何で合格しなかったのだろう」と考えてしまうような場合です。
「自分よりも他の人が上手かっただけ」と納得することも出来るかもしれませんが、実は根本的な問題点を抱えている人が殆どです。
では、根本的問題とは?
ここではよくある問題点として4つあげてみます。
まず、譜読みミス。
先ほど例え話で書いた「間違った漢字」と同じです。
一度はバツになりますが、それによって気がつけば問題は解決するので、一番やさしい問題ですね。
ただ、同じ譜読みミスでも、リズムのミスはちょっと違います。
例えば拍が短いとか長いとかの場合、本来違和感があるべきです。リズムに乗って弾けないことに違和感がない、というのが根本的問題です。
間の取り方が悪い場合も、この問題に入るかと思います。
次に、音が悪い場合。「良い耳(その意識を含め)を持っているかどうか」の問題です。
ギターの値段が高い安いではなく(確かにこの差もありますが)音色が悪い、音量が足りないなどの問題です。
一人で部屋で弾いていたら気がつかないでしょうかれど、コンクールなどで大勢と同じステージに立つとハッキリしますね。
昨日のオーディションでは(打ち上げで分かったのですが)1位の福井さんは1939年のサントス、2位の岩木さんはハウザー3世を使用していることが分かりました。
まぁ、それほどの名器でなくとも、楽器を十分に鳴らす弾き方が出来れば良い音は出せるものです。
雑音が多いというのも、この「耳と意識の問題」に入ると思います。
さて、3つめはちょっと難しいかもしれませんが、音楽理論上あり得ない解釈で弾いている場合です。
熱心なアマチュアの方に多くみられる傾向ですが、自分の感情だけで弾いていて思い入れが強すぎる演奏です。
「ええ?今の解決は何だ〜?」という感じです。疑終止ならそのように、掛留音ならそのように、音楽には(特に古典では)「きまりごと」のようなものがあります。それを無視して感情だけで弾いてしまうと、とってもチグハグになります。中には理論を全く知らなくてもセンスでうまく弾けている場合もありますが、知っていた方が自分の解釈に自信(裏付け)が持てるのではないでしょうか?
最後はその逆に、機械的でまったく抑揚のない演奏です。
ミスもなく理論的にもきちんとまとめていても、人間らしさのようなものが感じられず、まるで感動しない演奏。
「何で音楽やってるのかな〜?弾いていて喜びはあるのかな〜?」と疑問に思ってしまいます。
音楽は表現方法のひとつの手段ですから、表現したいものが何もなく聴いている人間に伝わらないようでは問題かと思います。
以上、よくある問題点を4つあげてみました。
独学ではなかなか気がつきにくいし、解決策も見つけにくいと思いますので、やはり先生にちゃんとついて「素直になる」ことが大事かと思います。先生を選ぶことも必要かも知れません。
公開レッスンや合宿の参加などもかなり良い勉強になると思います。
また志田ギター教室では定期的に来られない方の為に「ワン・レッスン」も行っていますので、お気軽にご連絡いただければと思います。
ただ、定期レッスンで既にほぼいっぱいの為、曜日は選んでいただけても時間帯は選んでいただけない場合が多いと思いますがご了承下さい。